村上文学

first person singular〜喪失の欠片

村上春樹「一人称単数」読了。村上春樹の短編集である。個人的なことだが、倒れて以来小説を書き始めた。短編を数篇、そして先日長編を脱稿した。そしていつの間にか読書をするとき作家目線であることに気がついた。それは長編と短編の関係性だったり、形容…

Setting Free the Bears1〜大熊座とともに

ジョン・アーヴィング村上春樹訳「熊を放つ<上>」読了。まだ上巻だが、物語は昆明を極める。ウィーンで出会ったジギーとグラフ。ところがいつの間にか戦争の影が忍び寄る。下巻に期待。 Setting Free the Bears1

Kangaroo Weather〜オフビートなフラグメンツ

村上春樹「カンガルー日和」読了。再読である。村上春樹の初期二十三篇の短編集。現在の村上ワールドの基盤となる要素が散見される。「図書館」「地下から助けてくれる女性」「羊」「鳥」。僕が今短編を書き溜めているのも、この短編集の影響が大きいかもし…

Mr. and Mrs.and other stories〜詩人の魂と男女の営み

マーク・ストランド村上春樹訳「犬の人生」読了。マーク・ストランドは「詩人」である。その故かこの短編集も雲のような霞のような捉え所のないものだった。訳者 あとがきで村上春樹はこう語っている小説というより「散文的語り」のようであるときっと僕らは…

How to Find a Vortex Cat〜ボストン・マラソンの魅力

村上春樹「うずまき猫の見つけかた」読了。端的にいうならボストンマラソンと猫のエッセイである。それ以上でもそれ以下でもない。しかし、村上主義者的には外せないエッセイかもしれない。#白猫Bookreview How to Find a Vortex Cat open.spotify.com popup…

Norwegian Wood〜杜の人

「ノルウェイの森」を観た。僕は原作「ノルウェイの森」が村上作品の中ではあまり好きではない。そして映画化した村上作品としては「トニー滝谷」が至高と思っている。それを踏まえこの映画を観てみた。正直に言うと原作に忠実、忠実すぎるほど忠実で映画化…

MURAKAMI RADIO3〜サラダ好きのライオンとは?もしくは、記憶は泥沼の中‥‥

村上春樹「村上ラヂオ3」読了。いつもの村上さんの軽いエッセイでした。一つお題を選ぶとすれば、「椰子の木はなぜあんなに高く育つか」⇒「インターネットでは『本当』に知りたいことはわからない」が好みです。大橋歩さんのエッチングも軽やかでいい。#白猫…

Sydney[2]Wallaby hot blood〜アネテで恒常的なオリンピック開催に賛成。

村上春樹「シドニー!(2)ワラビー熱血編」読了。ワラビー熱血編」読了。僕は特にアスリートではなかったのですが、高橋尚子の実況の部分では不思議と涙が溢れてきました。オリンピックは退屈かもしれないが、本書は退屈ではありませんでした。#白猫Bookrevie…

MURAKAMI RADIO〜僕はシーザースサラダが食べられない。

村上春樹/大橋歩・画「村上ラヂオ2」読了。今回はお気楽なエッセイである。どこから読んでも金太郎じゃないけど、どこから読んでも村上春樹である。一つだけ気になったことはししゃもの話である。雄のししゃもは美味くないというが、おそらくそれは偽ししゃ…

TOKYO KI TAN SYU〜品川猿に盗まれて

村上春樹「東京奇譚集」読了。確か読んだことがあったはずなのに、五本の短編全て初めて読んだ感じがしました。「ハナレイ・ベイ」は映画を観た後だったので映像に引き摺られているように感じましたが、一番気に掛かったのは「品川猿」という短編で自分の「…

DEADHEAT ON CAROUSEL〜断片集

村上春樹「回転木馬のデッドヒート」読了。短編集である。久しぶりに読み返してみた。でもこれはまるで村上春樹の長編のための密かな目元もダッhペンともいえないものだった。昔は「レーダーホーゼン」が印象的だったけど、今回は「登場人物に車椅子の人物が…

Never Let Me Go〜霧の中の記憶と身体の物語

カズオ・イシグロ/土屋政雄訳「わたしを離さないで」読了。序盤はクローン技術による臓器提供者の話と思い込んでいた。でも後半からの残酷さを含んだ哀しみは最後の一文で決壊を崩して滝のように感動を想起させるのであった。#白猫Bookreview Never Let Me G…

LIVE TOUR 2016 「THE LAST」 ~ENCORE~生菅 止戈男

「LIVE TOUR 2016 「THE LAST」 ~ENCORE~」を観た。私事であるが、スガシカオ氏とは同い年である。(ちなみに1966年生まれにはなぜかミュージシャンが多い)そんなわけでU-NEXTのリストを見ていた時に、是非これは見なければと思った。健常者の頃は何回か…

DAS SCHLOSS〜堅牢なシステムと孤立した個人

カフカ/前田敬作訳「城」読了。最初読む前はあらすじから、勝手にルネ・マグリットの「ピレネーの城」のような壁に囲まれた城に近づくことのできない話だと考えていた。しかし、読みだすと、測量士という技術を持った「K」が村のシステムに翻弄される話で、…

Sydney[1]koala naivety〜有袋類と過酷な大地

村上春樹「シドニー!(1)コアラ純情編」読了。村上春樹的オリンピック観戦記、だからと言って陸上競技だけに偏っていない。どちらかというとコアラの生態とオーストラリアの広さが印象に残ったので、まるで水曜どうでしょうのオーストラリア編みたいだった。…

Laos HAVE WHAT ANYTHING?〜アイスランドに想いを馳せて

村上春樹「ラオスにいったい何があると言うんですか?紀行文集」読了。村上春樹によるセルフ聖地巡礼のような紀行文集。個人的にはアイスランドに行きたくなる本でした。#白猫Bookreview Laos HAVE WHAT ANYTHING? ikuzuss.hatenablog.com ikuzuss.hatenablo…

Abandon the cat〜親子と子猫と戦争と

村上春樹「猫を棄てる」読了。村上春樹の物語に通底する戦争の影に触れたような気がします。#白猫Bookreview Abandon the cat

radiko〜Mercedes-Benz THE EXPERIENCE

昨夜、スガシカオのJ-waveのラジオをJ-waveで聴いていたら村上春樹がゲストで出てきたので今朝起きてからradikoのタイムフリーで録音してyoutubeにアップしてみた(初体験)内容はビーチボーイズや短編の話だったから両者のファンの僕にはすごいプレゼントに…

SEIJI OZAWA & HARUKI MURAKAMITalk The Music〜深層の和

小澤征爾×村上春樹「小澤征爾さんと、音楽について話をする」読了。 僕はクラシックは聴かない人だけど、小澤征爾の偉大さと有名度は知っている。 さらに高次脳機能障害のせいか最近音楽が楽しめなくなっている。だから村上春樹の文章だけを読むつもりで読み…

GHOST in Lexington〜村上奇譚集

村上春樹「レキシントンの幽霊」読了。 昔図書館で借りて読んだはずなのですが、短編集にはありがちなのですが、表題作さえ覚えていませんでした。今回も「トニー滝谷」を読まんとするために手に取ったのですが、それは記憶通りの小説でした、しかし「7番目…

「トニー滝谷」を観た。

Goodreads helps you keep track of books you want to read.〜人生におけるL.S.D.

村上春樹「職業としての小説家」読了。 決してこの本は作家としての指南書でもガイドブックでもなく、どちらかというと、昔の探偵小説の「読者への挑戦状」のように、僕らにどのくらい村上の小説が読みこなせているかを問うているテキストなのかもしれない(…

Drive My CAR〜形骸な愛

「ドライブ・マイ・カー インターナショナル版」を観た。 人を愛すること裏切り生きることその差はhi-lite一本くらいの違いしかないのかもしれない。#白猫独りロードショー DRIVE MY CAR ikuzuss.hatenablog.com ikuzuss.hatenablog.com ikuzuss.hatenablog…

Men Without Women〜半身の喪失感

村上春樹「女のいない男たち」読了。 もう何度か読んだ短編集なのですが、「ドライブ・マイ・カー」の映画を見る前の予習のために読んだのですが、他の短編はほとんど忘れていたので、酷く新鮮に感じられました。特に「独立器官」には妙に心を揺さぶられた気…

The Catcher in the Rye〜春樹畑に植えられて

J.Dサリンジャー村上春樹訳「キャッチャー・イン・ザ・ライ」読了。 まず感じたのは、野崎版と比べて圧倒的に読みやすいことと、ハードカバーのせいか、格調高く感じるため、ホールデンくんのスラングというか型破りな話し言葉がしかつめらしく感じることだ…

雑文集〜not雑but未収録集

村上春樹「雑文集」読了。 さまざまな賞を受賞したときの挨拶から結婚式のスピーチまで今まで掲載されなかった村上春樹の雑文集なので、村上春樹に興味のない人には全くお勧めできない本なのです。 でも僕は興味のある人なので面白く読むことができました。…

ライ麦今昔〜訳比べ

村上春樹訳の「キャッチャー・イン・ザ・ライ」を数行読み始めてはたと思い付いた。きっとこのまま読むとぼくの中ではきっと「ライ麦畑でつかまえて」は村上春樹の小説になってしまうんじゃないだろうかと。そして、すぐにフリマアプリを開きライ麦畑でつか…

Catcher in the Rye〜到着

フリマで購入した村上春樹訳版のJ.Dサリンジャー著「Catcher in the Rye」が届く。#白猫日記 【追記】他にも購入したマンガがあるのですが、それは読了後の感想で Catcher in the Rye

スカイ・クロラ〜理系文体とは

森博嗣「スカイ・クロラ」読了。 再読は何年振りかは思い出せない、でも、映画で小説を補完してたので、いくつか記憶との齟齬が発生していた。よく森博嗣の文章を理系文体なんて称すけど、読んでみると、そこには簡素で不要な装飾や無理な説明のない綺麗な文…

村上春樹の百曲〜ハルキスト向け

Spotifyのプレイリストの中でもこれは聴くことが多いプレイリストである。村上春樹の作中に出ている音楽(クラシック〜オールドロックまで)えお網羅したものである。 [http://村上春樹の百曲 村上春樹の百曲 www.spotify.com#白猫日記 ]