読書

first person singular〜喪失の欠片

村上春樹「一人称単数」読了。村上春樹の短編集である。個人的なことだが、倒れて以来小説を書き始めた。短編を数篇、そして先日長編を脱稿した。そしていつの間にか読書をするとき作家目線であることに気がついた。それは長編と短編の関係性だったり、形容…

<Harmony//>〜パブリックエネミーの自由

伊藤計劃「ハーモニー」読了。恥ずかしながら初伊藤計劃である。これは過剰に健康健全であろうとした人類の物語。しかし、過剰な社会は同時に息苦しさもあり、一種のデストピアでもあった。「ハーモニー」というタイトルが示すように、ハーモニクスの訪れた…

TONIGHT,AT ALL THE BARS IN TOWN〜天に選ばれしアル中

中島らも「今夜、すべてのバーで」読了。中島らもによる創作アル中体験談。しかしそこで語られている内容は、下手なホラー映画より恐ろしかった。僕も倒れたときに脂肪肝と診断された。だから、連続飲酒の描写は思い浮かぶこちが多々あった。しかし一種のハ…

TOURING WITH YOU(2)〜みなと漕ぐ

武田綾乃「君と漕ぐ2」読了。孤独にカヌーに打ち込んでいた湧別恵梨香にもながとろ高校カヌー部に入って徐々に変化が訪れた。それは友達や先輩、そしてライバルたちの出会いからである。きっとそれがカヌーをやることの醍醐味であり、恵梨香の成長であるかも…

Josee, ther Tiger and the Fish〜西の恋の物語

田辺聖子「ジョゼと虎と魚たち」読了。筒井康隆のエッセイで馴染んでいたが、初「田辺聖子」である。思っていたより遥かに「煮詰まった」男女の話の短編集。濃い男女の話は重すぎず軽すぎもせず心地よい短編集であった。#白猫Bookreview Josee, ther Tiger a…

AMNELIS AFFIANCED〜非対象な想い

栗本薫[GUIN SAGA47]「アムネリスの婚約」読了。ヴァラキア提督メロン提督は間に合った。モンゴール宮廷に忍び寄るアリストートスの魔の手から愛するイシュトヴァーンと「煙とパイプ亭」の人々を、そしてアムネリスの恋心も救ったのかもしれない。#GUIN SAG…

Two Billion Light-Years of Solitude〜

「二十億光年の孤独」読了。詩の読み方は、習ったかもしれないが身についてない。だから僕は本書においてなるべく「リズム」を意識した。でもわからない。わからないからいいのかとも思った。谷川俊太郎は僕に取ってはスヌーピーこと「ピーナッツブック」の…

TOKYO TOWER〜肌と心

江國香織「東京タワー」読了。東京タワーが見守る街の男女の葛藤と恋愛を描いた物語。そこには雨の匂いと都会の匂いが同居していた。#白猫Bookreview TOKYO TOWER

Jonathan Livingston Seagull〜やれること、やれないこと

リチャード・バック五木寛之創訳「かもめのジョナサン」読了。有名な著作であるが読んだことがなかった。手に取った時「完成版」という文字が目に映った。どうやら、以前のものは大四章がなかったらしい。一読後、禅問答のようにも感じた。自由に飛ぶことと…

Le plus important est invisible〜価値観のパラダイムシフト

サン=テグジュペリ加藤かおり訳「星の王子さま」読了。「大切なものは目に見えない」もう大人の僕らには簡単にそのような見方を変える必要も、哀しむ必要もない、それは、芯が通った強い考え方や見方ができるからかもしれない。#白猫Bookreview Le plus imp…

THE CALLIGINOUS CABALS〜悲しみの左府将軍

栗本薫[GUIN SAGA46]「闇の中の怨霊」読了。第二次ユラニア戦役が終わったとき、イシュトヴァーンにようやく家族ができた。しかしユラニア出立の前夜、何者かによってリーロは姿を消した。暗躍するはモンゴールの軍師アリストートスその人。しかもそれは彼の…

Setting Free the Bears1〜大熊座とともに

ジョン・アーヴィング村上春樹訳「熊を放つ<上>」読了。まだ上巻だが、物語は昆明を極める。ウィーンで出会ったジギーとグラフ。ところがいつの間にか戦争の影が忍び寄る。下巻に期待。 Setting Free the Bears1

The bastard museum〜ショートショートの楽屋裏

星新一「できそこない博物館」読了。ショートショートの鬼才星新一のメモをもとにした、創作の秘訣を1冊。しかし、そこにはたゆまなく考えを巡らす作家の姿があったのである。私なら、あまではスマホのメモ機能を使っている。最後に星さんの文章から抜粋「 …

If GIRL is LEVEL97〜妖より深いネットの闇

汀こるもの「もしかして彼女はレベル97」読了。出屋敷市子と愉快な妖たちの連作短篇集。あえて時事ネタもあるが、大切なことはオンリーワン」になること。というテーマがあるのかもしれない。#白猫Bookreview If GIRL is LEVEL97 ikuzuss.hatenablog.com

Dr.BUTABUTA NO HANATABA〜自分への贈り物

矢崎存美「ぶたぶたの花束」読了。相変わらずのぶたのぬいぐるみ山崎ぶたぶたの活躍?を描く五つの連作短編集。暖かく可愛らしくちょっぴり悲しいが、そこには人の人生の悲哀が詰め込まれているかもしれない。#白猫Bookreview Dr.BUTABUTA NO HANATABA

SOUDAN NO MORI〜ツイッター(現X)と人生はクソリプとの闘い

燃え殻「相談の森」読了。今をときめく燃え殻氏の人生相談である。ゆるりとした雰囲気の中にも苦労人故の含蓄があるかもしれない回答に涙を禁じ得ない。#白猫Bookreview #dawn813 SOUDAN NO MORI ikuzuss.hatenablog.com

THE YOUNERS IN YULANIA〜孤高の左府将軍

栗本薫[GUIN SAGA45]「ユラニアの少年」読了。グインはアルセイスを去った、ユラニアを去った。そしてときを同じくユラニアの英雄青髭オー・ランは堕ちた。イシュトヴァーンはユラニアの下町で、ヴァラキア時代の友人似のリーロと出会う、それを苦々しく思う…

MARIA BEETLE〜機関車トーマスは東北を走らない

伊坂幸太郎「マリアビートル」読了。映画「ブレット・トレイン」の原作である。映画を観るのは楽しみだが、正直原作を超えているか自信がない。舞台は東北新幹線。複数の業者が乗り合わせる不幸の新幹線。そこで繰り広げられる殺し合い。本当に不幸なのは誰…

decoyTales〜朽ち縄の自縛

西尾維新「囮物語」読了。よく「人は見た目が八割」などとしたり顔で言う人がいる。そしてこの作品は可愛いだけと思われていた千石撫子という少女を通して本音と建前の重要性を教えてくれts小説かもしれない。#白猫Bookreview decoyTales ikuzuss.hatenablog…

crayfish and sunflower〜瑞典から来た歌姫

LiLiCO「ザリガニとひまわり」読了。「王様のブランチ」でリリコのことは知った。正直当時は嫌いなタイプのタレントだった。今も好きかと言われると微妙なところと言わざる負えない。しかし今はJ-waveのパーソナリティーとして認識している。人生に苦労はつ…

Buon Anno〜もしくは初心表明及び昨年の総括

2024.1.1 みなさまあけましておめでとうございます 本年もよろしくお願いします 昨年お世話になった方々に多大な感謝を、そしてご迷惑をおかけするはずなので、よろしくお願いします。 新年のご挨拶と今年のスローガンをお伝えいたします。その前に昨年2023…

Alceis AFLAM〜紅京都の炎上

栗本薫[GUIN SAGA44]「炎のアルセイス」読了。この巻の発刊でギネスには未登録だが、世界最長の小説になったらしい。しかし物語は第二次ユラニア戦役の終盤。アルセイスに迫る三石連合軍。紅玉宮の囚人塔でグインに待ち受けるのは闇の司祭グラチウスの怪しい…

RAKUEN〜赤い鹿とともに

鈴木光司「楽園」読了。高校生のときに読んで以来の再読である。鈴木光司というと世間では「リング・らせん」のホラー作家と思われがちだが、間違いなく僕にとってはこの「楽園」である。ストーリーは離れ離れになった恋人が時空間を超え再び出会うというも…

Flower Tales〜人は走りながら考えることはできない

西尾維新「花物語」するがデビル読了。これは神原駿河が、亡き母の「薬になれなきゃ毒になれでなきゃあんたはただの水」という言葉を咀嚼、理解し一つのけじめをつける物語。#白猫Bookreview Flower Tales

EMBATTLED IN ELZYME〜大公の奸計

栗本薫[GUIN SAGA43]「エルザイムの戦い」読了。豹頭の超戦士グインは知らなかった。人の心の癒やされない渇望と果てしない絶望を。シルヴィア姫を拐かした大公ダリウスはサウル皇帝の死去の混乱に紛れてバルヴィナ城に逃げ込んだ。それを追うケイロニア黒龍…

Ki ki kirin's 120 will words〜ロッケンロールとともに生きる

樹木希林「樹木希林の120の遺言」読了。樹木希林さんの雑誌やインタビューを集めた120の言葉の書籍。これは、読むというより、じっくりと噛み締めて身体に馴染むのを待つ言葉の断片。内田裕也氏との複雑な関係も重く感じるけれど、なんといっても「死生観」…

PAPURIKA〜美貌の夢探偵

筒井康隆「パプリカ」読了。昭和の漫画家手塚治虫は若い漫画家に言ったらしい「夢オチはするべからず」と。しかしSF界の大御所筒井康隆には適用されないかもしれない。そんな筒井康隆の「夢」をめぐる大冒険譚。現実と夢を行き来する主人公に魅せられるが、…

lean Tales〜滅んだ世界で救われていた彼女

西尾維新「傾物語」読了。僕は運命論者じゃないけれど、選択をするしないが大きじゃないことだと記す本書にはちょっと気が楽になる物語シリーズの一冊。#白猫Bookreview lean Tales

The CARENE CONFRENENCE〜友は昔の彼にあらず

栗本薫[GUIN SAGA42]「カレーヌの邂逅」読了。シルヴィア救出作戦のため終結する連合国。そこにはイシュトヴァーン率いるモンゴールがいたのである。ケイロニアで袂をわかったぐいんとイシュトヴァーンの再会。しかし突然土下座して詫びるグイン。それを陰で…

Still Does Demian Have Only One Brain?〜ルーツを捜す人工生命体

森博嗣「それでもデミアンは一人なのか?」読了。いわゆる真賀田・四季サーガの一冊。これは他の著作と同じように小説の姿を取った森博嗣の思索の変形である。まるで、作者と対話するような、森博嗣の頭の中を覗き込んでいるようなものである。内容的には将…