Kindfull LOCKed ROOM〜ぼくの根源[ROUTES]

栗本薫「優しい密室」読了。

この本は、僕が高校生の頃(栗本薫に一番心酔していたころ)に読んだ、(多分)伊集院大介シリーズの初めての著作だと思う。まだ文庫になる前の単行本で買った覚えがあるので、よほど読みたかったんだと思う。その当時から、スクールカーストはあったらしいが、ぼくの周囲ではなかったので知りはしなかった。そしてこの本で「好奇心、猫を殺す(Kill a curious cat)」という英語の諺?の存在を知ったのでした。前も書いたかもしれないけど、昔は図書館の後ろ側には「読書カード」というものがあって、借りるときには、そこに名前を書いて管理したものである。この小説でも導入部で「読書カード」が小道具として使われている。密室トリックも「ぼくらの時代」の焼き直し風ではあるけど、この小説はどちらかというと推理小説というよりも、栗本薫の自伝的要素が大きい小説である。(一人称主人公の名前が森カオルであることからも、それは明らかである。

読んでいるうちにわかってきたのが、どうも、あの頃のぼくは栗本薫に自分を重ね合わせて考えているようであった。それから、こんな初期から伊集院大介の「そんな気がする」は使われていたんですね。高校生のころのぼくは、長い通学時間(ほぼ1時間以上)を読書に費やし、FMラジオのエアチェックに血道を上げ、少ないお小遣いを本を買うかレコードにしようかしか考えてない学生でした。ちょうど作中の森カオルのように、だから、ぼくは栗本薫にハマったのかもしれない。そして、この小説は多感な若年者を主人公にすることで、見事な青春小説になったのである。

 

ikuzuss.hatenablog.com

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Kindfull LOCKed ROOM

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図書カード:昔の図書館はこれで貸し借りの管理をしてました。


【追記】そう考えると、無料でいろんなことができるインターネット時代の現代はとても良い時代ですね。【追記】2読書カードは今なら個人情報云々で無くなっていたかもしれませんね。

【追記】3読んでいる途中で場是間sみだが出てきたのですが、別に感動したわけではなく、本を読めて、生きていてよかったと思ったからです。

【追記】4 現在並行してグイン・サーガを読書中なんですが、庵野忠明が何を作ってもエヴァになると言っていたのと同じように栗本薫とは何を書いても「栗本薫」という物語を書く作家だと確信しました。