読書
森博嗣「まどろみ消去」読了。森博嗣の短編集。相変わらずシャープでキレのある小説群。基本的に叙述トリックであるが、文体のおかげでそこに違和感を感じない。特に「虚空の黙祷者」は実に森博嗣ちっくである。以前は理系的な思考法に目が行ったが、自分で…
村上春樹「村上ラヂオ3」読了。いつもの村上さんの軽いエッセイでした。一つお題を選ぶとすれば、「椰子の木はなぜあんなに高く育つか」⇒「インターネットでは『本当』に知りたいことはわからない」が好みです。大橋歩さんのエッチングも軽やかでいい。#白猫…
原田マハ「たゆたえど沈まず」読了。このもの物語は大きく三つの柱でできている。ひとつはテオとフィンセントゴッホ兄弟の友情(心情)、そして林忠正と加納重吉の二人の日本人によるパリでの日本美術(浮世絵)の普及と商売、そしてフィンセント・ゴッホの…
矢崎存美「ドクターぶたぶた」読了。今回のぶたぶたはお医者さんです。でも主に描かれたのは病気や入院に関しての不安やそれを言えない孤独感でした。僕も脳溢血で入院した時は急性病院に担ぎ込まれたので入院に関しては不安を感じる暇もなかったのですが、…
米澤穂信「いまさら翼といわれても」読了。この小説には大きく二つの筋がある。一つは高校生にとっての進路、もしくは未来。もう一つは折木奉太郎の掲げる「省エネ主義の謎」である。その謎が語られたときには幼少期の少年の真摯な生き方と哀しみが胸を打っ…
カズオ・イシグロ土屋政夫訳「クララとお日さま」読了。人工頭脳を有するAF(人工親友)クララと病弱な少女ジョジーの物語。基本的にA.I.による一人称であるが、徐々に悪化するジョジーの病状と母親の計画にハラハラし通しだった。しかし、最悪の結果は回避…
森博嗣「工学部・水柿助教授の日常」読了。簡単に言うとオールザット森博嗣である。 日常の謎を装いつつも森博嗣の叙述トリックと思考のシミュレーションを小説風にアレンジしたものであり、これを小説と認めない人もいるかもしれないが、筒井康隆の解説通り…
フィリップ・K・ディック浅倉久志訳「アンドロイドは電気羊の夢を見るか?」読了。今まで読む機会はあったけど、なんとなく勿体無いような気がして未読のままでした。もちろん映画と内容が違うのはわかっていました(タイトルの「ブレードランナー」でさえウ…
森絵都長崎訓子絵「ショート・トリップふしぎな旅をめぐる28の物語」読了。旅をテーマにした連作短編集。なかでも「日曜の朝に‥‥」という短編が心に深く響いたかもしれない。ショートショートのように短い短編だけど、そこには少年の冒険心やなんとも言えな…
トネ・コーケン「スーパーカブreserve」読了。ナイナイと枕詞がついた小熊さんが、カブを通じ出会った人や縁を描いた外伝。そして小熊さんはこれからもカブに乗っていく。#白猫Bookreview SUPER CUB reserve ikuzuss.hatenablog.com ikuzuss.hatenablog.com
原田マハ「ゴッホのあしあと」読了。本書は「たゆたえども沈まず」のプロローグであり、エピローグでもある。当初はやけに薄い本で不安も感じてましたが、原田マハの筆力のせいかゴッホの絵の描写にぐいぐい引き寄せられあっという間に読み終えてしまいまし…
西尾維新「偽物語[上]」読了。月日フェニックス 本物と偽物はどちらに価値があるかと言う物語。この二つは対立概念ではなく表裏一体なのかもしれません。人には明瞭なところも後ろ暗いようなところがあるように。#白猫Bookreview FAKE TALES[2/2] ikuzuss.ha…
谷崎潤一郎文大川裕弘写真「陰翳礼讃」読了。実は、谷崎と言うと、美学に凝りすぎて、拗らせた文学者というイメージが先行して多少苦手としていたことは否めない。しかし、本書を正面からちゃんと読んでそれが、半分当たっているが、半分は的外れであったこ…
新井素子「グリーン・レクイエム」読了。初めて読んだのは高校生の頃だったと思います。なので、ひたすら懐かしく読めました。表題作「グリーン・レクイエム」も昔は悲しい少女と研究者のロミオとジュリエット的に思っていたのですが、いま読むと狩る側と狩…
G・ガルシア=マルケス著鼓直訳「百年の孤独」読了。南アメリカの蜃気楼の村に住むブエンディア一家の伝説的な物語。しかし慣れないスペイン風の名前のせいか遠い土地の古事記のような伝説を読んでいるようにしか感じなかった。しかし、物語の怒濤の流れにつ…
某社短編コンテストのために初めて書き上げた。短編をブログで公開します。 「もみじ」二〇二二年六月四日起筆 ぼくの言葉が足りないのならムネをナイフでさいて抉り出してもいい君の迷いと言い訳ぐらいほんとはぼくだって気づいてたのさ いつかあんなふうに…
【レギュレーション】ブログを開始した2021年10月6日以降の読んだ本を対象とする。 もちろん異論も反論も受け付けるので、コメント欄にお願いします。 では2020年一番印象に残った本は以下です。 ikuzuss.hatenablog.com ikuzuss.hatenablog.com ikuzuss.hat…
三崎亜紀「となり町戦争」読了。主人公北原修路は鎮魂の森で呟いた。「見えないことはなかったことといっしょ」だと。複雑な現代社会における見ることができないシステムを「戦争」に置き換えた近未来SF?僕はもう戦争が起きても役に立たない身体であるが、…
西尾維新「偽物語[上]」読了。阿々良々木暦は愛する妹に言った。「劣等感と一生向き合う覚悟あればそらは、偽物と本物は同じである。」と。そんな劣等感を抱えながら生きていく若者を描いた物語。そして劣等感と一生付き合うのは若者でも老いた者でも同じな…
森絵都「風に舞い上がるビニールシート」読了。僕は世代論はあまり好きじゃない。森絵都の著作はまだ二冊しか読んだことがない。おそらく彼女はX世代とかZ世代に分類されるのかもしれない。そしてその視線は限りなく優しく力強い。表題作の「風に舞い上がる…
椎名誠「気分はダボダボソース」読了。実は椎名誠との出会いは文章じゃなくラジオであった。当時NHK FMで「ふたりの部屋」というドラマ番組?があり、僕は熱心なリスナーだった。そこでこのエッセイの第四章「日本の異様な結婚式」を伊武(デスラー総統)雅…
米澤穂信「ふたりの距離の概算」読了。「友達に聞いたんだけど」と前置きをする話のほとんどは本人の話である。なぜかみんなわかっているのにそれを止めることはしない。この小説は本音と建前、そして会話の食い違いが引き起こしたささやかで少しだけ哀しい…
矢崎存美「ぶたぶた」読了。僕がメンタル弱っているせいじゃなく、なぜか、ぶたぶたシリーズを読んでいると涙が止まらなくなる。それは誰の心にもピンクの豚のぬいぐるみがいるからかもしれない。#白猫Bookreview BUTA-BUTA
村上春樹「シドニー!(2)ワラビー熱血編」読了。ワラビー熱血編」読了。僕は特にアスリートではなかったのですが、高橋尚子の実況の部分では不思議と涙が溢れてきました。オリンピックは退屈かもしれないが、本書は退屈ではありませんでした。#白猫Bookrevie…
村上春樹/大橋歩・画「村上ラヂオ2」読了。今回はお気楽なエッセイである。どこから読んでも金太郎じゃないけど、どこから読んでも村上春樹である。一つだけ気になったことはししゃもの話である。雄のししゃもは美味くないというが、おそらくそれは偽ししゃ…
村上春樹「東京奇譚集」読了。確か読んだことがあったはずなのに、五本の短編全て初めて読んだ感じがしました。「ハナレイ・ベイ」は映画を観た後だったので映像に引き摺られているように感じましたが、一番気に掛かったのは「品川猿」という短編で自分の「…
村上春樹「回転木馬のデッドヒート」読了。短編集である。久しぶりに読み返してみた。でもこれはまるで村上春樹の長編のための密かな目元もダッhペンともいえないものだった。昔は「レーダーホーゼン」が印象的だったけど、今回は「登場人物に車椅子の人物が…
トネ・コーケン「スーパーカブ(7)」読了。小熊大学編開始です。住環境から始まり、人間関係もリニューアル(not刷新)そして自分より悲惨な境遇の同級生と関わることでないないの少女も女子大生へとリニューアルされていくのです。#白猫Bookreview SUPER CUB7…
宮田珠巳「ときどき意味もなくずんずん歩く」読了。解説にも書かれているが、面白いのに、それを説明するのが難しい本である。個人的には、初めて椎名誠を読んだときを思い出したので、つい図書館で椎名誠を予約してしまったほどである。これでわかる人には…
矢崎存美「ぶたぶたの食卓」読了。ぶたぶたシリーズ二冊目です。僕はおそらく安心毛布みたいなものは持ったことがないと思うが、ちょっとこんな可愛いぬいぐるみなら持ったもいいと思ってしまった。でもこのシリーズはホンワカだけでなく、酸いも甘いもある…